私の体験記

2023年4月投稿

「芝生雑感」

杉本 和憲さん(3期・法)

余暇には様々なことを試み、またやっているが、私にとって、一番時間を掛けてきたのは芝生の育成、手入れだ。

もう、かれこれ40年になる。最初の子供が生まれたとき、遊び場のために家の周囲に芝生を張った。比較的土地にゆとりがあったが、庭を造るほどのお金がなかったせいでもある。現在、芝生の面積は庭の隅に温室や花壇を造ったので100平米ぐらいになった。

以来、冬から春にかけての手入れと5月から10月まで毎週の刈り込みを欠かさず続けてきた。

いい芝生を作る絶対条件は1日4時間以上の日照と風通し、あとは愛情を持って少しでも長く芝生と接触することだろう。

芝にとって週1回の刈り込みも大切だが、最も重要なのは春までのメンテナンスだ。これの良し悪しはその1年間の出来栄えを決定づける。

そのようなわけで、芝生がセピア色に枯れてしまう1月から3月にかけてが一番忙しい。芝焼き(火炎放射器で)→目土入れ(川砂、油粕、石灰等でつくる)→消毒剤の散布→根きり穴あけ作業(芝の老化防止)→除草剤の散布、を順次行いながら、傷みの激しい箇所や凹凸修正のための芝の張替え、それでも出てくる雑草の手抜きなど次ぎ次ぎとやる事が目白押しだ。

芝生に接する中からいろいろ学ぶことも多い。自然や季節の変化がよく分かることは勿論だが、簡単な芝生日誌をつけているので、肥料が3年続けて安くなった、といったことも分かってくる。

また、何十年も芝生を見続けていると芝の表情が見えてくる。通常、人間は雀の顔の区別がつかない、おそらく雀のほうも人間の顔はみな同じに見えるのではなかろうか。

しかし、長く生きていると、人間は人間の顔の識別にそれほど苦労しないばかりか、僅かの表情の変化から心の動きまで読み取ることもできるようになる。

見慣れていない人には気がつかない芝生の中の雑草も一目で見分けがつく。一軒何の変哲もない芝生にも、それぞれその時々の表情があるのだ。

どんな事でも、ずっと続けて見詰めているといろいろな事が見えてくるのだと思う。意識して見ていれば、もっと深く分かってくることになる。

このことを学んだことは大きな収穫だったと思っている。

余暇の過ごし方を見れば、おおよその人物の資質が分かるとは、よく言われる言葉だ。やっていることの中身の問題ではなく、どう過ごしているかを問われているのだと、私は解釈している。

ただ何となく余暇を過ごしてきた人は、おそらく仕事もただ真面目に何となくやってきたのではないだろうか。

これからも心豊かな人生を送るために、もう少し気が利いた趣味を持ちたいとは常日頃から思っている。そこで最初に述べたように、いまも様々なことに取り組み、試みているが、まだ何一つ物になっていない。

人生のテーマに出来るようなものが、見つけられたら、このうえない幸せだと思っている。

「芝生雑感」杉本 和憲さん(3期・法)
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